ラベンダーと星空の約束+α
 


その理由は二つある。

俺を育ててくれる父さんに悪い気がしたのと、

今の父さんの息子でありたいと思う、俺の心の問題。



「流星にそっくり…」
「やっぱりアイツの子供だな…」

そんな風に言われる度に、少し寂しくなった。



そして今まで“なんとなく”だったその気持ちは、生まれた大地を見て強くなる。



大地は父さんに似ている。

まだ赤ん坊なのに一重で目つきの悪い感じに、父さんの遺伝子を強く感じる。



それが羨ましかった。

妹達は母さん似、弟は父さん似、俺は……



そんな気持ちが積もって、二ヶ月ほど前に父さんに聞いてしまった。


「俺の顔見て、嫌な気持ちにならない?」って…




「あ?」と言って、意味の分からない顔をした父さん。


今思えば、あの質問は酷く的外れで、父さんの気持ちにちらりともかすらない、質問だったのだろう。



質問の意図を全く理解出来ずにいる父さんに、視線を逸らしながら補足する。




「俺って写真の父さんにそっくりでしょ?

だからさ…この顔を見る度、自分の子供じゃないと感じるんじゃないかと思って…

父さんの血を引いていない俺を、自分の息子として育てるのって…どんな気持ちなのかと思って…」




そこまで言うと父さんは、やっと俺の言いたい事を理解してくれた。


それと同時に、結構痛いげんこつを頭に貰った。




「バカ野郎が。男のくせに顔がどーのこーの言ってんじゃねぇよ。

確かにお前は流星のガキだ。

けどな、生まれた時から育ててるのは俺だ。

仮にアイツがひょっこり生き返って、お前を返せと言っても絶対に返さねぇ。

お前は俺の息子なんだ。
“大原紫龍”だろ?」





父さんのあの言葉は嬉しかった。


嬉しくて…げんこつされた痛みにごまかし、少しだけ泣いてしまった。



馬鹿な質問をしたと思ったけど、聞いてみて良かったとも思う。



そのお陰で、写真の父さんの存在がスッと自然に心に入るようになった。



きっと俺…今の父さんの息子でありたいと願う余り、壁を作ってしまっていたんだな…



壁が崩れた後には、純粋に写真の父さんがどんな人だったのかと気になり始めたし、


敬遠していたこの書斎に、自分から進んで入るようにもなった。



< 93 / 161 >

この作品をシェア

pagetop