ラベンダーと星空の約束+α
その理由は二つある。
俺を育ててくれる父さんに悪い気がしたのと、
今の父さんの息子でありたいと思う、俺の心の問題。
「流星にそっくり…」
「やっぱりアイツの子供だな…」
そんな風に言われる度に、少し寂しくなった。
そして今まで“なんとなく”だったその気持ちは、生まれた大地を見て強くなる。
大地は父さんに似ている。
まだ赤ん坊なのに一重で目つきの悪い感じに、父さんの遺伝子を強く感じる。
それが羨ましかった。
妹達は母さん似、弟は父さん似、俺は……
そんな気持ちが積もって、二ヶ月ほど前に父さんに聞いてしまった。
「俺の顔見て、嫌な気持ちにならない?」って…
「あ?」と言って、意味の分からない顔をした父さん。
今思えば、あの質問は酷く的外れで、父さんの気持ちにちらりともかすらない、質問だったのだろう。
質問の意図を全く理解出来ずにいる父さんに、視線を逸らしながら補足する。
「俺って写真の父さんにそっくりでしょ?
だからさ…この顔を見る度、自分の子供じゃないと感じるんじゃないかと思って…
父さんの血を引いていない俺を、自分の息子として育てるのって…どんな気持ちなのかと思って…」
そこまで言うと父さんは、やっと俺の言いたい事を理解してくれた。
それと同時に、結構痛いげんこつを頭に貰った。
「バカ野郎が。男のくせに顔がどーのこーの言ってんじゃねぇよ。
確かにお前は流星のガキだ。
けどな、生まれた時から育ててるのは俺だ。
仮にアイツがひょっこり生き返って、お前を返せと言っても絶対に返さねぇ。
お前は俺の息子なんだ。
“大原紫龍”だろ?」
父さんのあの言葉は嬉しかった。
嬉しくて…げんこつされた痛みにごまかし、少しだけ泣いてしまった。
馬鹿な質問をしたと思ったけど、聞いてみて良かったとも思う。
そのお陰で、写真の父さんの存在がスッと自然に心に入るようになった。
きっと俺…今の父さんの息子でありたいと願う余り、壁を作ってしまっていたんだな…
壁が崩れた後には、純粋に写真の父さんがどんな人だったのかと気になり始めたし、
敬遠していたこの書斎に、自分から進んで入るようにもなった。