ラベンダーと星空の約束+α
写真の父さんが読んでいた本を、読んで見ようと思った。
読書家で小説も書いていたと言う父さんに、近付いてみようと思った。
読みかけの本を開き、引き出しからロシア語の辞書を出す。
今読んでいるのはロシア語の本。
この部屋の書棚にぎっしりと詰め込まれている書籍の内、4分の3は洋書だ。
日本語の本は半月程前に全て読み終わり、この冬休みにロシア語の本を読み始めた。
読むとは言っても辞書を引きながらの作業だから、ストーリーを楽しむ域には程遠い。
でもいつかは、この部屋にある全ての本を、辞書なしで読めるようになりたいと思う。
分厚いロシア語の本を10ページ読むのに、2時間かかった。
一階から大地の泣き声が聞こえて数分続き、ピタリと止む。
きっと目が覚めてオムツを取り替えてもらい、オッパイ飲んでる最中なんだろう。
大地の泣き声に気を取られ、一旦集中力が途切れると、再び本の世界に入る事が出来なかった。
一度椅子から立ち上がり、首を回して固まった筋肉をほぐす。
それから窓辺へと近付き雪景色を眺めてみた。
窓から見えるのは、雪にすっぽりと埋まったファーム月岡の店舗。
店舗に続く道と、正面玄関と倉庫の入口だけ除雪してあるけど、
毎日大量に降り積もる雪が、すぐに行く手を遮ってしまう。
家の中はやけに静かだった。
深々と降り積もる雪の音が聴こえてきそうな程だ。
けれど、もうすぐウザったい程賑やかになる。
時計を見ると、時刻は16時半。
オッパイを飲み終えたらしい大地の「あ〜あ〜」と言う喃語と、母さんの俺を呼ぶ声が聞こえる。
「紫龍ー!彩香と風香のお迎えに行って来るから、大地見ててー!」
ほらな、煩い妹達が帰って来ると、静かな時間は終了だ。
退屈している暇もない。
溜息をつきながら階段を下りる。
毎度妹達に振り回されている俺。
今日もまた返答に困る質問をぶつけて来るんだろうな…
ここからは少し想い出話し。
好奇心旺盛で「なんで?どうして?」が口癖のようになっている、妹達の話し……
―――――……
―――……
それは大地が生まれて数週間が過ぎた日のこと。
写真の父さんの本を読んで見ようと決意して、この書斎に篭っていると、
保育園から帰ってきた彩香と風香が、ノックもせずに飛び込んできた。