ラベンダーと星空の約束+α
「お兄ちゃん、風香が嘘ついた!
あのね、鳥さんが連れてくるって言うんだよ!」
「本当だもん!
絵本に書いてあったもん!
鳥さんが連れてくるんだもん!」
「嘘つき!」
「嘘じゃない!」
待て待て…
いきなり飛び込んで来て、訳のわからない喧嘩を始めるな。
叩き合いになりそうな二人を慌てて引き離し、間に入って話しを聞く。
「分かった分かった。
彩香は風香が嘘をついたって言いたいんだな?
風香はそれが嘘じゃないと。
で?鳥さんが連れて来るって、何を連れて来るんだ?」
「赤ちゃんだよ!
赤ちゃんは、お母さんのお腹から出て来るんだよ?
鳥さんじゃないもん」
「でも、絵本で鳥さんが赤ちゃんの入ったカゴをくわえてた」
風香は手でカゴの形を作り、それをくわえる真似をした後、両手を羽ばたかせて部屋の中を一周する。
ああそうか。
コウノトリが赤ん坊を連れて来る物語を読んだのか。
だけど、大地が母さんのお腹の中にいたのを知ってるから、訳が分からなくなってるのか。
「赤ん坊は母親のお腹の中で大きくなって、約10ヶ月後に生まれてくる。
コウノトリの話しは昔からの言い伝え。伝説だ」
二人の顔を交互に見ながら説明してやると、
彩香が得意げになり、風香が不満そうな顔をする。
「ほらね、鳥さんなんて嘘なんだよ!
風香は嘘ついた!」
「彩香、そう言う話しは嘘とは違うんだ。
事実じゃない事が全部嘘だと言ったら、お前らの好きな星座の話しも、お姫様の話しも、みんな嘘になってしまう。
伝説、物語、そう言う物を知る事は意味のある事だし、何より楽しいだろ?
風香は伝説を言ったんだ、嘘つきじゃない」
折角丸く収めようとフォローしてやったのに、今度は風香が得意げに彩香に言う。
「ほらね、お兄ちゃんは嘘じゃないって!
風香は嘘つきじゃないもん。彩香謝ってよ!」
「…ごめんね」
彩香が謝り風香の機嫌も直ったところで、書斎から二人を追い出した。
夕飯までにこの章を読んでしまいたいのに、全く…
本のページに意識を戻すが、1ページ進んだところでまた、バターンと勢いよくドアが開けられた。