近い未来の話
「あたし、多分、曽根田のこと好きだよ」
「え」
「好きだから、アキちゃんにヤキモチ妬いたんだよ、まともに曽根田のカオ、見れないんだよ、曽根田と友達じゃいられないんだよ・・・まぁ、曽根田には分からないと思うけど・・・」
とことん、あたしって可愛くない女だと思う。
でも、ちょっとだけ悔しかったんだ。
素直になってしまうのが、あたしから曽根田に好きだと伝えるのが、悔しかったんだ。
「そうなの」
「そうだよ」
「そっか」
「・・・そう、だから、その気がないなら、こっちが勘違いするような言動は、困るから」
「勘違いするようなって、たとえば」
「いま、手首掴んでるのとか、一緒に抜けようとか言ってくるのとか、なんていうかもう、あんたのしてること、ぜんぶだよ」
この距離から見上げた彼の顔は、ひどく、整って見えた。
あの、大好きなバンドのベーシストよりずっと、ずっと、ずっと。
「・・・ふははっ」
「あ、またわらっ・・」
「どうしよう、ちょっと嬉しいんだけど、俺」
手、離されたからどうしようかと思ったら、また口元を押さえて笑ってる。
しかも、さっきより豪快に。
こんな顔、初めて・・・
「・・・アキちゃんに、そのカオ、見せてないよね?」
「え、なんで」
「いや、それは、その」
「正直、覚えてないけど」
「・・・だよね」
「あの日はたしか、バイト先の飲み会があって、それの帰りにあいつと偶然会ったみたいだから・・・」
「みたい・・・?」
「あぁ、あいつから聞いた話だから、俺は全く記憶にないんだけど」
なんだ。そっか。
・・・よかった、のかな。
でも、最初から二人で飲んでたってわけじゃなくて、ちょっと、ほっとした。