近い未来の話
同時に、やっぱり曽根田のこと、ちょっと気の毒に思えた。
身に覚えのないことで、急に殴られたり、責められたり。
曽根田本人があまり気にしてないふうなのが、余計に哀れに感じられる。
「・・・痛い?その傷」
「ああ、もう、だいじょうぶ」
「曽根田、もっかい笑って」
「・・・え、」
「曽根田ってさ、笑うと、くちおっきくなるんだね」
「へぇ、そうなんだ、俺」
「うん、にぃって・・・」
・・・あ。
また、距離が近づいた。
完全に、無意識だった。
体が、ちょっと、くっついてる。
曽根田と、目が合う。
二人の会話が止まり、店で流れるジャズの音が、さっきよりも鮮明に、耳に届いた。
曽根田は相変わらず眠そうな目をしてるけど、本当のところ、何を考えているのかは分からない。
「・・・・あの」
「うん?」
「あんまりさ、そうやって、まじまじ見ないで、ほしいんだけど」
曽根田が、片手で自分の目を覆った。
もしかして。
照れて、いるのだろうか。
分かりずらいけど、きっとそうだ。
店内が薄暗いから、よく見えないけれど、明るければすぐに顔の色で判断がついただろう。
「うん、ごめん曽根田」
「・・・あの、さぁ」
「うん」
「もうちょっと、くっついても、いいですか」