狛犬に好かれました。
新居
「なに、ここ……。一応、神社よね?」
暗い霧に包まれ、そびえたつ大きな神社。
入り口両脇にいる狛犬がただでさえ、怖いのにまして霧のせいで怪獣にも思えてくる。
来るんじゃなかった……
新生活に向けて、ちょっとお参りしようかなとか思っただけなんだけど……
急な寒気を感じて身震いする。
もうさっさと、お参りだけして帰ろうと足を歩めようとした瞬間……
「おねえちゃん、神様の心を持っている」
どこからともなく声が聞こえてくる。
不意に背後に気配を感じた。
振り返ると私のスカートをぎゅっと掴む小さな男の子がいた。
「誰?」
「……狛犬」
意味不明なことを言い出す男の子。
試しに、振り返って通り過ぎた狛犬の石像を見てみると、見事なほどに姿がなくなっていた。
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