狛犬に好かれました。
ココロ
とぼとぼと重い足を前へと歩める。
雨水で重くなった制服がぺたりと肌に張り付くが、そんなのどうでもよかった。
社の入り口に立つとドサッとスクールバックを落とす。
「おかえり~」
相変わらずゴロゴロし、顔も背けず声だけを発する。
なにか不自然だと感じたのが私の方を振り返り、目を見開いた。
「お前、……びしょ濡れじゃん」
チカゲはどこかへ姿を消し、戻ってくるとバスタオルを私に投げつけた。
バサッと頭に被さる。
「おい」
そのまま何もしない私にチカゲは呼びかけた。
「……ッ…ヒック……ッ…ヒック…」
「……琴音?」
足音が段々と近づいてくる。
チカゲの脚が視界に入るとピタリと音も止んだ。
「……チカゲ…ッ…私…ヒック……人…ッ…殺しちゃった…ヒック……」