続・雨の日は、先生と
次の日の朝。



「じゃあ行ってくるよ、唯。……あれ?」



ネコ用の出入り口がガムテープで塞がれていることに、首を傾げる先生。



「ここ、閉めちゃうの?」


「あ、すみません。ちょっと……たまが、土とか運んできちゃうから。」


「そうか、たまか。うーん。」



先生は、困った表情で黙り込む。

分かってる。

そしたらたまは、外に行けなくなっちゃうって。

元々ノラのたまにとって、それはストレスのたまることなのかもしれなくて。



「まあ、いいか。行ってくるよ!」


「はい。行ってらっしゃい。」



それでも笑顔で手を上げてくれる先生。

心が広いんだ、と思う。

でも、たまのことはまた考えないと。

ストレスがたまって、シロとけんかするようになったりしたら困るから。



陽さんに、いつまで隠していられるか分からない。

どうして隠していなければならないのかも、段々よく分からなくなってくる。



でも、もしあの女の人が。

陽さんを、呼び捨てにするあの人が。

先生とつながりのある人で。

もしも先生が、その人を大切に思っていたら、と思うと。

言えない―――



先生が出て行くと鳴り響く電話にも、もう慣れた。

家から出なければ、私は守られているんだから。

この家にいていいって、先生が言ってくれたんだから。



自分に言い聞かせるようにして、心の動揺を鎮めると、私はいつものように掃除を始めた。
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