続・雨の日は、先生と

あまあまの金曜日

「ただいまー。」


「陽さん、おかえり。」


「はー、疲れた。」


「お疲れ様です。」



先生のスーツの上着を受け取って、ハンガーに掛ける。

今日は金曜日。

嬉しい嬉しい金曜日。



「唯、ちょっとこっちへ、」


「その前にごはん!ごはんです!」



お預けを命じられた犬みたいに、眉を下げる天野先生。

そんな先生が、愛おしくてたまらないんだ。



「まったくもう。いつ唯は、天野先生に指図するようになったんでしょうね。」


「そんなの、陽さんがそう言ったんじゃないですか。先生と生徒の関係は終わりだって。」


「分かってるよ。そんなの、分かってる。」



そう言って、口をとがらせる。

金曜日の陽さんは、きっと世界中の誰よりも可愛らしい。



「私はこの一週間をね、乗り切ったんですよ。4月って、教師にとっては大変なんです。担任も持つことになったし。」


「今日は天野先生で行くんですか?」


「……ふっ。そうしようか。」



先生はそう言って、急に先生の顔になる。



「笹森さん、」


「天野先生。」



見つめ合うと、高校時代の思いがあふれ出して、止まらなくなりそう―――

天野先生は、私を正面から抱きしめる。



「笹森さん、キス、していいですか?」


「……あまの、せんせっ、」



私たち、変態なんじゃないだろうか―――


目を閉じると、先生がそっと唇を重ねてきた。

あの鍵のかかった数学科準備室で、初めて先生とキスした時みたいに。

触れるだけの、優しいキス―――


真っ赤になった私の耳を、優しく噛んで。

先生は、ふっと笑った。



「ゆいの、変態。」



先生の脛を軽く蹴ると、先生は大げさに痛がって見せた。



「蹴ることないじゃないですか、笹森さん。」


「変態は天野先生です!」



そう言って笑い合うと、先生はもう一度私を抱きしめた。

今度は、陽さんとして。


ここから先は、内緒。

金曜日の先生は、私だけのものだから―――
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