続・雨の日は、先生と
第5章 先生はどこに

通わない心

それなのに、先生。


春を過ぎて、夏になる手前の梅雨の頃。

先生はいつも、どこか遠くを見ているようになったね。

時に、視線は私を通り越えて、私の知らない景色を眺めているようだった。


どうして急にそうなってしまったのか、私にはちっとも分からなかった。

先生が寂しそうな顔をする度に、どうしたらいいか分からなくなった。



「陽、さん。」


「……。」


「陽さん?」


「……ん?呼んだ?」



きょと、とした目で振り返る陽さん。

その目には、どこか夢を見ているような、そんな曖昧さがあって。



「いえ……。何でもないんです。」



結局、そのわけを尋ねることすらできない私。

そんな自分が、臆病で大嫌い。


先生は、やっぱりふいに私の前から姿を消してしまいそうで。

怖かったから。


先生の、その曖昧な優しさが、何よりも怖かったから―――
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