続・雨の日は、先生と
それからの私は、これまでと大して変わらなかったけれど。

母と准一さんが仕事に行ってしまうと、この広い家にたった一人で。

掃除をしたり、料理をしたり。

たまには買い物に行ったり、シロの散歩をしたり。

そんなことを繰り返して。


こんな日々を、空虚と思う日もある。

だけど、お腹の子は着実に育っている。

私が立ち止まっていたところで、この子は関係ない。

どんどん、大きくなる。


この間の検診。

妊娠2か月になった私は、初めて胎児の心音を聴いて。

感動して涙が止まらなくて。


先生に、聞かせたいって。

そう思った。


陽さんは、動物が好き。

おそらく、子どもも好きだろう。

そんな陽さんが、喜んでくれないはずはないと思った。

自分の子どもが、私の中に宿ったと聞いて、喜んでくれないはずはないのに―――



「陽さん。」



夕暮れ時には、シロの散歩をしながら。

どこかに先生がいるんじゃないかって、そんな想像をして歩くんだ。

あの日、男の人に媚びる世界から、連れ出してくれたように。

また陽さんは、どこからともなくふっと現れて。

私を導いてくれるのではないかと。


ずっと、ずっと期待していた。
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