続・雨の日は、先生と

涙のプロポーズ

「言い訳、聞いてくれる?」


「うん。」



近くの公園のベンチに並んで座った。

陽さんの言い訳、聞いてあげるよ。

私は先生を、待って待って、待ったから。

今さら先生を責めようなんて、そんなことは思わない。



「大体、15年ぶりかな。両親のところに行ってきたんです。」


「え、」



先生が、ずっと会っていないというご両親。

なぜ、今?

私に内緒で?



「申し訳ない。唯にいいかっこしようとした!」


「いいかっこ?」


「プロポーズする前に、両親に会うべきだと思ったんだ。それがけじめだと思った。だけど、そのことは唯に内緒にしたかったんです。」



その理由を聞いて、私は思わず吹き出してしまった。



「だって陽さん。プロポーズって、予告してするものでもないでしょう?」


「うん、まあ。」


「どうして、何かそれらしい理由を付けなかったんですか?それなら、私も納得して、家出したりしなかったのに。」



そう言うと、先生ははっとした顔で私を見つめた。



「でも、それは嘘になる。」


「え?」


「唯に、嘘だけはつきたくなかった。」



どれだけ正直なの、先生。

人を傷つけない嘘なら、ついてもいいんだよ。

そういうことしないから、こんな大ごとになってしまう。


だけど、そんな先生が、私は大好き―――



「両親に会って、今までの経緯を話したんです。唯に会うまで、会ってからの話を。両親はっ、」



先生の頬を涙が滑る。



「両親は、ずっと私を待ってくれていた。親不孝な私を……。後ろめたいと思っていたのは、私だけだったみたいで。」



そっか。

先生のご両親は、そんな先生のこと、ずっと遠くで見守ってくれていたんだね。


私もね、今なら分かるんだ。

お腹の子を、大事に思うように。

母になる人は、この子を一生守ろうって思う。

その思いが、子どもにとっては重いこともあるかもしれない。

私のお母さんのように、その思いが重荷になって、逆の行動を取ってしまうこともある。


でもそれは、愛してるからこそなんだ。

自分の子どもは、何があっても。

例え、そむかれても。

嫌いになんてなれない―――
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