短編集
察したのか、秋斗君は私を外に引っ張りだした。

 そして、私をあの栗の木のところまで連れてきた。


「どうしたの…?」

秋斗君が空に向かって指した指の先を見ると……。

「満月だ。すごーい!すごいね、……」

秋斗君を見ると、真剣そうな顔で私を見ていた。

「…私がここに来た理由はね…大好きな人に振られたからなんだ」

今なら話せる。
秋斗君になら…。

「ホントに大好きだった。この人が運命の人だ!って。でも…崩れた。それから何か分からなくなったんだ…恋って何?恋する気持ちってどんなんだっけ?って。」

涙でそう。

「心も……体もっ……ズタズタだったよ」

そのとき、秋斗君が抱きしめてくれた。

「でも今は……秋斗君に出会えたおかげで……大切なコトを思い出すことができた。……ありがとう」

恋する気持ち。今までとは違う気がする。
たとえ実らなくても…良かったと思う。


「空」

声が聞こえた気がして秋斗君の方に顔を向けると、顔が近づいてきた。



秋が一番大好き。




.

「秋斗君!見て見て!スイートパイ!」
『おいしそう。』

「おばあちゃんと作ったの♪♪」

あの後、帰った私は両親に頼み込んでおばあちゃんの家に引っ越した。
学校ももちろん転校。

私が両親に反対された時、助けてくれたのがおばあちゃん。
そろそろ一人暮らしは不自由になってきたといって、両親を説得。
すっごい元気だけどね。




「秋斗君、雪が降ったら雪だるま作ろうね」
『早く雪降らないかな』
「まだ秋だもん」




今度は本当の恋だと思う。





fin
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