短編集
ただ……今までは昔みたいな関係でいいと思ってた。
けど、本当はそんなのはイヤだと悲鳴をあげてたんだ。

昔のことを言われるたびに、自分が昔みたいに弱くなって……昔の自分と菜代を壊したくなった。

今の関係を壊さずにいる強さ。
男としての力の強さ。

結局、俺は後者の強さを選んだ。
軽蔑されてもいい。避けられてもいい。
むしろ、避けてほしい。

菜代が誰か他の男と歩くのを黙って見てるくらいなら……。


「な、那雄っ」
菜代は嫌がっている?
けど、離さない。
歪んでいたって構わない。

キョウダイではいられない。いたくない。
それを分かってほしい。

男だって気づいて欲しい。

菜代、ごめん。
わかってたんだ。今の関係を壊したくないって想う気持ち。


……菜代ってこんなに小さかったのか?こんなに華奢だなんて気が付かなかった。

気づかなきゃよかった。
離したくなくなる。

でも、離さないとヤバいかも。
色々と。
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