短編集
 放課後、部活が終わった私は人気の無い校内を教室に行くために歩いていた。
 急いで部活に行きすぎてケータイを忘れてきたから。

 梅雨のじめじめした空気が体に纏わりついて鬱陶しい。

 今日はミーティングだから良かったけど、筋トレだったら最悪。
 テニス部は雨が降ると筋トレになるからイヤなんだよね。
 汗とじめじめした空気が混ざると……もう、いや。

 急ぐために廊下を走っていたら、教室の少し手前の窓が開いていて思いっきり滑って転んだ。

「いったぁ……。何で開いてるのよ!」
 一人寂しく叫ぶと、虚しく廊下に響いた。
 ぶつけたお尻が痛い。

 私は立ち上がると窓を閉めて教室に向かった。
 その時、ドアが急に相手女の子が飛び出してきた。

「か……華世?」
 華世は私を見てから走り出した。
 泣いてる。
 それに……何でブラウスがはだけてるの?
「華世!待って」
 華世の腕を掴むと、華世は大きな目にさらに涙を浮かべた。
 なんで……華世に何があったの?

 こんな格好で歩くのは良くないから鞄からカーデを出すと、華世の肩にかけた。

「何があったの?」
 私が聞いても華世は何も言わない。華世は手で涙を拭うと、弱々しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。ありがとう……夏弥ちゃん」
 そう言うと、走って行ってしまった。

 追いかけようとしたけど、なぜか足が動かなかった。
 心配なのに……。

 華世を襲ったやつがまだ居るだろうと思って教室を覗くと、意外な人が立っていた。
 華世を襲うような人だからと予想していた人とは全然違った。

「葉月……」

 教室に一歩入ると、葉月は私の方を向いた。
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