短編集
 確かに俺は華世ちゃんが好きだった。
 可愛くて、少し天然で……性格も良い。
 夏弥が性格が良いって言うから間違いなく性格が良いと思っていたんだ。
 偶然、華世ちゃんが友だちの悪口を言ってるのを聞いても。

 夏弥と華世ちゃんは仲が良いらしいから少しくらい悪口を言っていても華世ちゃんは性格が良いってことだと思っていた。華世ちゃんが誰かの悪口を言っているのを夏弥が聞いたこと無いわけないし。
 でも、違ったらしい。

 放課後、忘れ物をして教室に戻ると華世ちゃんが夏弥の席で何かをしているのを見た。
 少し廊下から見ていると、華世ちゃんが持っているのは夏弥のケータイだってことが分かった。

 いくら華世ちゃんだからって人のケータイの中身を見るのは良くないよなぁ。

「華世ちゃん」
 俺が話しかけると華世ちゃんは夏弥のケータイを後ろに隠して可愛い笑顔で俺を見た。

 いっつもなら嬉しいけど……今は誤魔化されたりしない。
 それにしても……可愛いなぁ。

「どうしたの?葉月君」
 ちょこんと首を傾げる仕草は可愛いけど、可愛いけど!
「夏弥のケータイになんかあった?」
 俺は素早く華世ちゃんの後ろにあるケータイをとった。

 画面を見ると、削除って文字と俺の名前。
 ……どういうことだ?

「……最近アドが消えてるって夏弥が言ってたけど……もしかして、華世ちゃんが?」

 まさかそんなはずがない。

「そうだよ、葉月君」

 さっきと変わらない笑顔で言われて、一瞬何を言われたか分からなかった。
< 6 / 28 >

この作品をシェア

pagetop