短編集
 どうすればいい?このまま葉月を見送っていいの……?

 葉月が華世を襲うわけない。無理矢理なんて葉月には似合わない。
 それに……私は知ってる。
 華世は……私が思うような子じゃないって。

 葉月を応援したのは……葉月なら華世の孤独を分かってくれて、満たしてくれると思ったから。
 華世は寂しい子。
 両親に捨てられた華世。

 もし、華世が仕組んだとしても私は何にも言えない。今までと同じように接するだけ。

 私は華世から離れた一人。その罪を償うには許すしかないから。

 私は鞄を昇降口の前に置くと葉月の元へ傘もささずに走った。
「葉月!」
 袖を掴んでも葉月はこっちを向いてくれない。
「葉月……押してダメなら引いてみろって私言ったじゃん」
 私がため息混じりに言うとやっとで葉月はこっちを向いた。
 意味が分からないというように。

「あんなに押したら華世も泣くって。気をつけないと」
「な……夏弥?」
 私は葉月の頭を一発殴ると、後ろを向いた。
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