漫画家の君(仮)

「……そういえば…さ
ノート見たって言ったよね…?」

声のトーンが少し下がった
多分、真剣な話なんだろう…
そう考えるとノートを見てしまったのが
申し訳ない

「……ごめんな」

すると長谷川が
驚いた顔でこちらを見た

「いやいや!謝んないで!
忘れた私が悪いんだから…!」

そんなことない、と言いたかったが
微笑んだ長谷川を見てそんな言葉を
口に出すことが出来なかった

「私…ね、山代先生が好きなんだ
皆の人気者であと、優しくて
私にとって山代先生は憧れなんだ!」

俺はその話を黙って聞いた
その時に何故か胸の奥がチクっと傷んだ

「でもね…
やっぱ先生にとって私はただの生徒」

「………」

「叶わない恋だって分かってる
だけど自分の気持ちに嘘はつけないんだ」

その時の長谷川の目は驚くほど真剣で
俺はそんな長谷川の力になりたいと思った

「……ごめんね?
こんな話しちゃって…興味ないよね」

いつもの笑顔で笑った
俺は首を横に振ってから
“そんなことない”と言った
長谷川はまた笑顔で笑った


・*・*・*・*・*・*・*・
< 8 / 14 >

この作品をシェア

pagetop