ワタシなしで廻る世界
マールブルグ出血熱。
 致命率の高い危険なウィルスである。
 不意に、静寂を切り裂いて、オスカーが慟哭した。
 
「ああぁぁぉぅ! ロード! ロードはどちらにいらっしゃる!」

「今戻ったよ」

現れたのは、彼のパトロンでノーサンプトンシャー伯爵が三男、故ジュリウス・ジェラルディーン。
 真珠のように白い肌、朝日の色のブロンド、煙るスモークブルーの瞳。
 全てが半透明に透き通っている。
 天井付近に姿を現したジュリウスは、オスカーの絶叫に驚き、急いで傍へと舞い降りた。
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