ワタシなしで廻る世界

カムデン

  
(キャロルお嬢様のわがままには困ったものだわ)

 今朝、当主のグラント・マッケンジー(職業、弁護士)から、ボタンの取れかかったシャツを渡された。
 五時間も前のことだ。
 簡単な針仕事だ。
 五分で終わらせられるはずなのに、キャロルに髪を結ってほしいと言われれば結い、ランチのメニューが好みじゃないと言われれば作り直し、ディナーにジャガイモの冷製ポタージュを食べたいと言われてジャガイモを剥き、今度はアイスクリームを作れと言われて街へ出た。
 いつになったらボタンを付け替えられるだろう。
 掃除も洗濯も途中だ。
 先を思えば気が焦る。
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