君がのこしたもの
頼まれた手紙を渡す。

ただそれだけの事だったのに



「…これ、桜木由里から」

「桜木から…?何だろな」




何だか悔しかった。
急に由里がうらやましくなってきた。


何で?
何でこんなにもどかしいんだろう



目の前で雅史が手紙を開いていた。
絶対何か言われるという嫌な予感を察して、友梨は逃げるように走り出した。



由里のいる階段まで戻ろうと思っていたが、何だか気まずい。
こう思っているのは自分だけだろうと分かっていても…無理だった。



その時。


「中嶋!!待てよ!!」


ああ、怒られるんだな、と思いながら走るのをやめ、そっと振り向いた。



「…雅史君?返事なら由里に直接言ってよ。」



「ち、違う…俺…俺は」



放課後の廊下には誰も居なくて、窓の外は雨が激しくて、雅史の言った事は一度では聞き取れなかった。



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