とびっきり、片思い。



『そこには、もう1人むすびを見てる女の子がいたんですけど、僕はそれがめちゃくちゃ食べたかったので、思い切って手を伸ばしたんです。そうしたら、その子も同時にそれに手を伸ばしていて。結論を言うと、2人同時におかかのむすびに手を伸ばし、その後譲り合いをしたって話なんですけどね』



そこまで聞いて確信をした。


これって、完全に私とのエピソードじゃん!


頭の中には、あの瞬間が鮮明に蘇ってきた。


テレビ画面の2人の会話は続く。



『へぇ、それで結局どちらが譲ったんですか?』


『えっと、僕ですね』


『優しいんだね。でも、その子は相手がアイドルの“カナタ”だってことには気づかなかったんですかね?』


『さぁ、どうでしょうね。でも僕と話している時は、全く気づいてない感じでしたけどね』


『えぇ!?だったら、もしその子がこの番組を見てたら驚くんじゃないですか。カナタ君、テレビの前のその子に向かって一言お願いしますよ』


急にふられて困惑している様子の彼の顔がズームアップされていく。





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