とびっきり、片思い。
中田は、意地悪な笑みを浮かべて私を見上げた。
「へぇ。妖怪も優しい時があんだな」
こうして普通に話すのは久しぶりなのに、成長が感じられない発言内容にため息をついた。
そして強めの口調で言う。
「あのね、言っとくけど私はいつも優しいんだから!」
冗談交じりで言ったけど、中田の顔が辛そうで、本気で心配になった。
いつものお調子者パワーが引っ込んでしまったようだ。
「ねぇ、あんま平気そうじゃないよ。やっぱり、ちゃんと保健室の先生に言って見てもらって、無理しない方が良いんじゃないかな?」
珍しく眉間にシワを寄せているから相当痛いのかもしれない。
顔をのぞき込んだら、私から視線をそらして言った。
「平気だ、このくらい。こけて足首ちょっと捻っただけだから」
「でも痛そうじゃん。腫れてるようにも見えるし」
「平気だって」
「でも、じゃあ肩かそっか?」
せめてもの支えになるかなって思って言ったんだけど、中田は気の抜けたような声を上げた。