とびっきり、片思い。





中田は、意地悪な笑みを浮かべて私を見上げた。



「へぇ。妖怪も優しい時があんだな」


こうして普通に話すのは久しぶりなのに、成長が感じられない発言内容にため息をついた。


そして強めの口調で言う。



「あのね、言っとくけど私はいつも優しいんだから!」



冗談交じりで言ったけど、中田の顔が辛そうで、本気で心配になった。


いつものお調子者パワーが引っ込んでしまったようだ。



「ねぇ、あんま平気そうじゃないよ。やっぱり、ちゃんと保健室の先生に言って見てもらって、無理しない方が良いんじゃないかな?」



珍しく眉間にシワを寄せているから相当痛いのかもしれない。


顔をのぞき込んだら、私から視線をそらして言った。



「平気だ、このくらい。こけて足首ちょっと捻っただけだから」


「でも痛そうじゃん。腫れてるようにも見えるし」


「平気だって」


「でも、じゃあ肩かそっか?」



せめてもの支えになるかなって思って言ったんだけど、中田は気の抜けたような声を上げた。




< 113 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop