とびっきり、片思い。
千田が来てくれたことに一安心した。
私は、先にみんながいるグラウンドに戻ることにした。
「じゃあ、行くね」
そう言って体の向きを変えて歩き出すと「おい、妖怪」と、中田がまたあの呼び方で呼んだ。
立ち止まって振り向くと、何かを言いたそうな顔で私を見ている。
また、どうせろくでもないことを言い出すんだからと思いながら、次の言葉を待った。
すると、「やっぱ何でもない」と言って、唇を結んで視線を泳がせた。
その予想外のことに驚いたけど、私は「そう」とだけ言って、身体の向きをくるりと変えて再び歩きだした。