とびっきり、片思い。


だけど、どこかで勇気を出さなければいけないことも分かっていた。


体育祭の日に足首を痛めてしまった。


大丈夫だろうと思いながら片づけをしていたけれど、徐々に痛みが増してきた。


左足を引きずりながら体育館裏の倉庫にどうにかコーンを仕舞って、出口付近の段差に座り込んだ。


「大丈夫?」


見上げなくても、その声の主が新垣だってことが分かる。


久しぶりに交わす言葉が照れくさくて、「何だ妖怪か」と咄嗟に言ってしまった。


「私で残念でした」


いいや、残念の逆だよ。


そう心の中では認める。


けれど、心配してくれてサンキューと爽やかに言いたい気持ちと、照れくさい気持ちが戦った。


俺は結局、今まで作り上げてきたものを壊せない。


だからいつものようなことを、また今日もしてしまう。


「へぇ。妖怪も優しい時があんだな」

「あのねぇ、言っとくけど私はいつでも優しいからね!」


今は怪我の幹部よりも、自分の行動に対して痛みを覚えた。


知らないうちに難しい顔をしてしまっていたようで、新垣が顔を覗き込んできた。


一気に縮まった距離に、耐性が出来ていない俺は、顔を背けてしまった。



「ねぇ、あんま平気そうじゃないよ。やっぱりちゃんと保健室の先生に言って見てもらって、無理しない方が良いんじゃないかな?」


「平気だ、このくらい。こけて足首ちょっと捻っただけだから」


「でも痛そうじゃん。腫れてるようにも見えるし」


「平気だって」


「でも、じゃあ肩かそっか?」


この提案には断固として拒否だ。


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