とびっきり、片思い。
黒字で印刷されたカナタのサインが目に飛び込んできたのだ。
「カ、カナタから…!?」
つい一人で叫んでしまった声が、廊下に響いた。
キョロキョロと周りを見渡し、誰もいなくてホッとし、改めてハガキの差出人を見た。
カナタの所属事務所からだった。
それはファンレターの返事だったのだ。
加速していく鼓動と一緒に階段を駆け上がった。
―ガチャッ
家の戸を勢い良く開け放った。
「お母さん!」
「大声出して、何事?」
母の部屋に駆け込んで、興奮を伝える。
「返事が来たの!!」
母はキョトンとしながら、差し出したハガキを取りじっくりと眺めている。
数秒後目を見張って顔を上げた。
「すごい!良かったじゃん。
....でもこれコピーね」
確かに印刷されたもので、皆同じものを受け取っているのかもしれない。