とびっきり、片思い。



11月も下旬に差し掛かった。


受験勉強の息抜きということで、地域の神社の秋祭りに森りんとやってきた。


模擬店やステージが用意されていて、世界が暗がりに包まれ始めた午後6時頃、広い敷地内は賑わいを見せた。


私は去年のちょうど今頃、東京に来たから、まだこのお祭りの存在を知らなった。だから、参加は今年が初めてなのだ。


地元の人たちが一堂に集結していて、歩いていると同じ中学校の人たちとすれ違う。


遭遇は、家族で来ていた百合子から始まり、咲や桜ちゃんにも会って、結局今は私含めて5人でお祭りを楽しんでいる。


ステージでは、カラオケ大会が開催されていて、咲と桜ちゃんはデュエット曲でエントリーをした。


2人はテントの中の順番待ちの列に並んでいる。


私と森りん、そして百合子はステージ前に設置された客席で彼女たちの出番を待機していた。


「うわ、森川じゃん!」


聞き覚えのある男子の声が背後からして振り向いた森りんが、「千田じゃん!」と言ったのに反応して、私と百合子も振り返った。


そこには千田だけでなく、あと3人クラスの男子もいた。


「やっぱ、みんな来てんだなあ」


そう言いながら千田たちが私たちのすぐ後ろの客席に座った。


「これから中田が歌うぞ」


「ええ!?」


真っ先に声をあげたのは、森りんである。


「あ、ほらほら出てきた」


驚いている間もなく、その人影はステージ上に姿を現した。
ひゅーひゅー!と千田たちが合いの手を打つ。



< 150 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop