とびっきり、片思い。
「とりあえず友也も座れよ。これから三星と眞田も歌うって」
「マジか。それは見ねえとな」
たまたま森りんの横の席が空いていたので、速攻そこを薦めると千田たちもノリが良くて、同調してくれた。
座って落ち着いたあとで、2人の会話が横から微かに聞こえてきた。
「中田の歌声、すごく感動したよ」
「サンキュー。嬉しい」
なんかこの2人の雰囲気良い感じかも。
そんなことを直感して、つい顔がほころんだ。
咲と桜ちゃんはアニメの主題歌を振付付きで歌った。
客席の私たちもそれに合わせて小さく踊りながら、楽しい時間を過ごした。
結果発表の8時半まで、あと1時間くらいあり、折角だしみんなでお祭りを回ろうということになったものの、10人もいたら、流石にやりたいことが大きく分かれた。
何か食べたい人もいれば、ゲームしたい人もいたから、8時半に再びステージ前で会おうということになった。
「中田ってさ、射的とか得意?」
森りんが聞くと、答えたのは本人ではなく、千田だった。
「うん。こいつ、すげぇ得意!」
な?と確認するように言って、肘で横腹をつついている。
「得意かどうかは、わかんねえけど、まあ好きだよ」
「またまた、もったいぶって。前なんてさ、3DS撃ち落としたんだぜ。しかも、それその場で会った見ず知らずの男の子にとってあげてんの」
「あれは、まあ、たまたまだって」
「そのあともお菓子とか取ってたじゃん。1個も撃ち落とせなくて嘆いている横でお前は...」
千田、良いことを教えてくれました。ありがとう。
これは大チャンス!と思って、私は口を開いた。
「いいじゃん。射的、中田とやってきなよ!」
状況を理解している百合子も、隣でうんうんと頷いている。
咲と桜ちゃんは、とりあえず黙って聞いてくれていた。