とびっきり、片思い。

あなたへ##中田side##




ひとつ扉をちゃんと閉めると、新たな扉が開くのだろうか。


千田やクラスのやつ達と地元の秋祭りに出かけた。


小学生の頃から出場しているカラオケ大会に今年もエントリーし、Shooting starのバラード曲を歌った。


初めて聴いた日から、マイナーな綺麗なメロディーが耳から離れなくて、今年はこれを歌いたいと思ったんだ。


告白の返事を貰った日から半月が経ち、心の中は以前より落ち着いてきたと思う。


千田が落ち込んでいた俺に向けて言った。


「女なんて星の数ほどいんだから、落ち込むのは1日だけにして、次の星を探そうぜ!」

ポジティブ発言だが、現実はなかなかそう上手くはいかないものだ。


千田は、小6の時に片思いしていた子から振られた経験があるそうだ。


「失恋は自分を磨くチャンスを与えてくれるものだと思え。男は一度振られた後からが本当の勝負だぞ!」


いかにも先輩らしい、男気のある言葉を俺にかけてくれた。


空手をしている時と、野球部で後輩に教えている時、そしてカラオケ大会に向けて練習に励んでいる瞬間は虚しさを忘れられた。


ステージから降りて、客席に行くと、そこに新垣がいたのには驚いた。森川や田村も一緒だ。


指折り数えるほどしか見たことのない私服姿は新鮮で、いつもは結んでいる髪を今日はおろしているからか、大人っぽくみえる。

恥ずかしさで顔を直視できないでいると、森川の隣の席に誘導され、少し安心を覚えた。


座った俺に向けて、森川が言う。


「中田の歌声、すごく感動したよ」

「サンキュー。嬉しい」


素直に言えた。


何故だろう。新垣の前だと曲がってしまう言葉が、他の奴には真っ直ぐに表現できるのか。



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