とびっきり、片思い。


無事に射的の前まできた。


ちょうど一か所開いていて、半ば森川の強引さに押されるようにして、子どもたちばかりの中に入った。


後ろから見たら小さな背の中に、ただ一人巨人が紛れ込んでいるような光景だろう。


「兄ちゃん、一歩下がってな」


祭り字の印刷をしてある青色の法被を着て、頭に鉢巻をしたおっちゃんが言って、白い歯を見せながら笑った。


中学生は既に大人に入るようで、玉は子どもが7発チャンスがあるのに対して5発だ。

その上少し遠めから打たなければならない。


案外久しぶりだから景品を撃ち落とせるか、あまり自身がないが、とりあえずやってみっか。


小さく後ろを振り向くと、森川はキラキラとした瞳をして、何かを待ちわびているようだった。


「欲しいのあんの?」


銃にコルク玉をセットしながら聞いたら、「うん!」と即答だった。



「どれ?」

「あれ!」


後ろからグイッと顔を出して指さしたから、一気に顔が近づいた。


ふわりと届いたシャンプーの香りに鼓動が鳴る。


さっきから俺なんか変だぞ。


リズムを乱した心音のことなど知る由もない様子の森川は、俺に告げる。


「あの、人生ゲーム」

「あ、ああ」

「難易度、高すぎかな?」

「うーん。そうだな。結構ムズイかも」

「そうだよね…」


じゃあと言って他のを見ているが、なかなか気を惹かれるものが見当たらないらしい。





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