とびっきり、片思い。
年が明け、怒涛の受験を終えて一週間が経った、2月14日のことだった。
俺は掃除当番を終え、森川が待つ踊り場に向かった。
階段を下りていく足音に気づいたようで、ショートヘアの黒髪が揺れて、振り向いた。
森川は小さく手を振った。
「来てくれてありがとう」
到着したと同時にペコリと頭を下げる。
改まったような空気に緊張を覚えた。
森川は、顔を上げて手に持っていた小さな箱が入った紙袋を差し出した。
「これ、中田を思って作りました。良ければ、受け取ってください」
時折俺の顔を見ながら、目を伏せながら言った。
「マジで?」
こんなの貰ったの初めてだ。
信じられない出来事に、ポカンと口が空いてしまいそうだ。
既に半分以上開きかけていたその隙間から言葉を紡ぎ出す。
「サンキュー」
森川から受け取ると、それとね…と間髪入れずに続けた。
「あのね、好きです」
吸い込んだ空気がいき場所を失って、息を飲み込む。