とびっきり、片思い。
森川は俺の目を見た。
「私と付き合ってもらえませんか?」
俺が固まっていると、口をパクパクとさせながら急いで付け加えるように言った。
「返事は、今すぐじゃなくていいからね」
「う、うん」
なんて返したらいいだろうか。
言葉を探して黙り込んでしまった俺に対して不安を抱いたのか、森川が顔を覗き込むようにして聞く。
「困らせちゃったかな?」
「いや」
考えるよりも前に首を横に振っていた。
ただ、素直に嬉しいと感じている自分がいて戸惑っているのは確かだ。
いつの間にか、心の中で森川の存在が大きくなっていたんだ。
「ありがとう。気持ちは嬉しい」
そう言うと、断られると思ったのか、唇をきゅっと結んで俯いた。
俺は慌てて口を開く。
「少し考えさえて。…その、前向きにさ」
「えっ!」
驚いたように目を大きくして真っ直ぐに俺を見上げるから、照れくさくなって思わずうなじをかいて目を泳がせた。
「うん!」
森川は次の瞬間、しっかりと頷いてから体の向きをくるりと変えて、上半身だけ捻って俺を見た。
「待ってるね、返事」
そう言い残してから階段を駆け下りて行ってしまった。