とびっきり、片思い。
卒業式を終えた午後の光の中、私は静かな教室の窓から、記念撮影会場となっている賑やかなグラウンドを眺めていた。
この窓から、色んな季節を見てきたけど、それも今日で最後なんだ。
「あ、妖怪が黄昏てる」
「もぉ」
頬を膨らませる私を見て、にひひと笑いながらこちらにやってくる。
中田は、坊主頭から髪が伸びて落ち着いた雰囲気になっている。
ちょっぴりワックスなんかつけちゃって、大人っぽくなった。
「今日の空の魅力度は、ぎりぎり、食いもんには勝てないな」
この通り、発言には変化は見られないけれど、私はつい笑ってしまった。
「そうだ。渡してえものがあったんだ」
「私に?」
「おう」
小さな薄ピンク色をした封筒が差し出されたから受け取ると、私の目を見てさらりと言った。
「また、会えると良いな。ミニチュアダックスフンドに」
中田はニッと口角を上げた。