とびっきり、片思い。
「溜息つかない。幸せが逃げていくよ」
「だって、やっぱり無理だったなって思って」
「未紗、まだ終わってないよ」
その言葉にハッとして顔を上げた。
「確かに、この建物の出入り口は一箇所だけだった。一階のロビーで待つ」
そう言った私に母がグーサインを向ける。
ここに到着してから色々と母任せにしていた。
ここから先は、自分の意思で進もうって決意した。
神様、お願いです。
勇気と、もう一度チャンスを下さい…!
1階に戻って、再びソファーに腰を下ろした。
この空間にいるのは、私と母と管理人の男の人1人だけで、とても静かな時間が流れていた。
その空気を切るように、エレベーターのドアが開き、中からカナタたちが出てきた。
さっきよりも大勢の大人が彼を取り囲むようにして、斜め後ろにある出口に向かって歩いてきている。
彼は中心にいて、あの女の人と笑顔で何かを話している。