とびっきり、片思い。
管理人の前を駆け抜け、建物から飛び出すと、信じられない光景が起きていた。
ガードマンが一斉に、彼だけをその場に残して、ビルを背に去って行くのが見えたんだ。
そしてその直後に現れたのは、一台の大きな黒い車で、彼の前で停止した。
スーツ姿で眼鏡をかけた柔らかい雰囲気の男性が運転手だった。
少しだけ待ってくださいと願いながら、私は思い切って口を開いた。
「あのっ!」
届いてほしい、心の中ではそれだけを思っていた。
私が呼ぶ声に彼は気づいてくれて、車のドアを開けようとした手を止め、こちらを振り向いた。
その時、頭上では、まるで贈り物みたいに、灰色の雲の隙間から、明るい青空と日差しが顔を覗かせたんだ。