とびっきり、片思い。
小走りで彼のもとに駆け寄り、緊張で意識が朦朧としながらも、言葉を紡ぎだした。
「は、はじめまして。お忙しいところすみません。私は、新垣未紗と申します!」
カチコチのロボットのような話し方で、突然自己紹介し始めてしまった。
可笑しな奴だと思われてしまったかもしれない。
ここまで来て、カナタを目の前にして言う言葉を一切考えていなかったことに気が付いて焦りだす。
サングラスの奥の瞳が、微かに見開いているのが分かった。
「あの、カナタさんですよね?」
「うん、そうだけど」
マイク越しでも、スピーカー越しでもない、リアルな彼の声が耳に届いた。
それは、コンビニで会った時よりもはっきりとしたものだった。
「5年間、ずっと応援してます。カナタさんの歌や演技がパワーの源なんです」
ありきたりの言葉かもしれないけれど、自分の声でこの気持ちを伝えたかったんだ。