とびっきり、片思い。
その後、無事(?)駅に着いて、電車が早く来てと願いながら、生ぬるい風が吹くホームで待った。
「てかさ、妖怪はなんでここにいんの?」
「習い事よ」
無愛想に答えた。
「ほー。品川は、妖怪修行の場ってわけか」
「意味がわかりません」
中田は隣で頷きながら、完全に一人で納得の世界に入っている様子だ。
と思いきや、鞄の中からアポロチョコを出して食べ始める。
私にも何粒か分けてくれた。
「美味しい、ありがとう」
「どういたましてんびん」
やっぱり日本語をアレンジして使うのが好きみたい。
それにしても、久しぶりのアポロは美味しい。
甘さに翻弄されたのか、さっきまでと心変わりして、コイツにだから気軽に言えるかもと思って、私は口を開いた。
「アイドルのカナタ知ってる?」
「知ってるぜ。あのミニチュアダックスフンドみてぇな顔してるやつだろ」
なんでそうなる。
でも、確かにスッと通った鼻筋と瞳が大きくて愛らしい感じのところは似ているかもしれない、なんてちょっとだけ納得しそうになった。