とびっきり、片思い。
一通り話してスッキリして、会った時からずっと気になっていた質問を投げかけた。
「話は変わるけど、中田はどうしてここにいたの?」
「道場に通ってるんだ」
「何の?」
「空手」
「へえ!すごいね」
だから中田って目力があるのかもと、前々から思っていたことに納得した。
私の祖父も武術をやっていて目力があってカッコいい。
昔、祖父と目力について話したときに、武道をしていると目で人を射るから自然と強くなるのだと話して聞かせてくれたっけ。
中田は「10歳の頃から通ってて、茶帯だぜ!」と得意げに鼻で笑った。
これには素直に凄いと感動した。
継続は力なりという言葉が浮かんだ。
「今日は、師匠の都合でいつもより終わるのが早かったんだ。いつもは10時くらいまでやって帰るんだけどな」
そっか、今は9時だから1時間ほど早い。
だから、道で私と遭遇したということだ。
「中田って強いのね!」
「な、なんだよ急に…」
誉め言葉のつもりだったのに、急に不機嫌そうな様子になりそっぽを向いてしまった。