とびっきり、片思い。
高鳴る鼓動を押さえようと必死になるが、距離が近づくにつれ心拍数は増した。
新垣は何かを呟きながら歩いている。
内容はよく聞き取れなかったが、話しかけるには良いタイミングだと思い、あと数十センチのところで、俺は意を決して声をかけた。
「うっせぇなぁ。何つぶつぶ独り言いってんだよ。妖怪ツインテールめ」
急な出現にビックリ仰天したような顔が、街灯の明かりに照らされてよく見えた。
新垣は習い事があったみたいだが、何をやっているのだろう。
気になったが、あまり探ってほしくないオーラを感じ取り、俺は口をつぐんだ。
「ほー。品川は、妖怪修行の場ってわけか」
「意味がわかりません」
顔をしかめる新垣も可愛くて、俺の前だけでその表情を見せてほしいって思う。
鞄からさっきコンビニで買ったアポロを取り出し、2人で食べた。
その時、コンビニで目撃したギラついたオーラを放った男の正体は、アイドルのカナタだったということが判明した。