とびっきり、片思い。
第1章
いつもと違う朝
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24年前・東京。
キッチンで流れるラジオから、金曜日の午前7時を知らせる音が聞こえてきた。
制服に着替えた私は、鏡の前でネクタイを整えた。
そして、鏡の中の自分に向かってニコリと笑いかける。
よし♪
本日も晴天なり。
おおっと!
勢い良く部屋を出たのは良いけれど、挨拶をし忘れていたことに気づいて引き返す。
それは、本棚の上に並んで座らせている、私がフェルトで作った2体の人形(ミサ&カナタ)に向けて声に出してするものだ。
「おはよう!」
日課を終えて、朝から鼻歌交じりにスクランブルエッグの香ばしい匂いのするキッチンに向かった。
そこにいた母が、朝食を皿に盛り付けする手を止めて顔を上げ、驚いたようにこちらを見る。
「自ら起きてくるなんて、珍しいね」
へへへ。
いつもは、ギリギリまで寝ていて起こしてもらっているもんね。