とびっきり、片思い。
帰宅した私を玄関で迎えてくれた母は、ニコニコと嬉しそうに笑っていた。
「何かあったの?」
そう聞くと、目をキラキラとさせて「うん!」と頷いた。
まるで少女のようなワクワクした表情に期待が高まる。
「今年のハートフルテレビの司会者Shooting starでしょ?」
「うん。そうだよ」
「番組内でやる、ドラマの主演って誰か知ってる?」
随分と唐突な質問だった。
ハートフルテレビとは、毎年夏に放送される生放送のTV番組で、毎年アイドルが司会を務めるのだが、今年はカナタたちに決まった。
その番組のコーナーのひとつで、ドラマも放送される。
私は靴を脱ぎながら答えた。
「知ってる。カナタだよ」
「うん。それでね、ドラマの中でカナタが誰かとぶつかるシーンがあるそうなの」
「へー…」
「そのシーンのエキストラを1人探してるって、未紗が部活に行ってる時にマネージャーの横田さんから連絡があったの」
「え?」
「それでプロフィールを見た結果、未紗さえ良ければ、あなたに決定したいって。ディレクターさんがおっしゃってるそうよ」