とびっきり、片思い。
台所からは、夕食の香りがしてきた。
私は腰を上げ、眺めていた人形を再び棚に置いた。
部屋を出る前に、ドアノブに触れたまま、もう一度自分の心に問いかける。
これでいいんだよね?
ぐっと力を込めてドアノブを捻り、部屋を出て、キッチンに続く短い廊下を歩いていく。
炒め物をしている母の背中に、一歩ずつ近づいた。
「お母さん」
「あら、決めたの?」
「うん。私...」
一瞬、言葉に詰まった。
決断したことを告げることが、こんなにも難しいとは思っていなかった。
胸が少し痛い。
でも、自分で決めたことなのだから、後悔はしないはず。