とびっきり、片思い。
胸の中
修学旅行で宿泊しているのは、2階建ての旅館で、この2日間は貸し切りだ。
その晩、消灯前の部屋の中は騒がしかった。
部屋割りは、クラスごとに女子を半分ずつに分けてあって、私のところは8人部屋で、森りんも一緒だった。
部屋のテレビからは、毎週のこの時間にやっているShooting starの冠番組が流れている。
みんな自分の布団の上に座ったり寝転んだりと自由な恰好で、テレビを見ていた。
私は、見たいような見たくないような微妙な気分のまま、視線は画面に向いていた。
彼の姿を目にすると、あの撮影のことが頭をよぎってしまう。
撮影はもう終わったかな。
次の瞬間、数名の女子が高い声を出す。
「ね、カナタ君って最近格好よくなったと思わない?」
「それうちも思ったぁ。“ますます”だよね」
持ち上がったその話題に、普通の顔をしていなくちゃと自分に言い聞かせ、ぎゅっと体に力を入れた。
「恋してんじゃないかな」
「あー、それあり得る。でも今の、この中にファンいたら完全に摘発言になるよ」
「え!?もしかしている?」
スカート丈の超ミニが印象的な、いわゆる派手目系女子の石島(いしじま)さんが恐る恐る辺りを見た。
誰も手を上げないのを見て安心したのか、ぎゃははっと豪快に笑う。
「もしいたら、うち殺されんじゃん!」
「良かったね、石島さん」
平気だって思っていたのに、そのやり取りを聞いていたら、私の中で何かがぷつりと切れたような音がした。