とびっきり、片思い。
「いつ渡そうかなって思ってたんだ」
照れたように鼻をかく森りんにお礼を告げた。
そのあと、すぐ部屋には戻らず、トイレと部屋のちょうど中間地点にある中庭に行った。
寄り道の提案をしてくれたのは、森りんだった。
置いてあるスリッパを履いて外に出ると、庭に植えられている植物の香りに包まれて気持ちがよかった。
夜空に瞬く星が綺麗で、眺めているとつい時間を忘れてしまいそうになる。
こうして静かな空間に身を寄せていると、彼を想ってしまうのは、今では癖のひとつになった。
「自分で思うんだ。私、馬鹿だなぁって」
私たちしかいない空間で、自分の気持ちを言葉にした。
「だって、会ったこともない人のことを思って、ドキドキしたり苦しんだりしてるんだもん」
切なさを隠すため、ずっと奥の誰にも手の届かない場所に、自分でさえも分からないところに痛さを埋めるために、自分で言って自分で笑う。