とびっきり、片思い。
胸の中 ##中田side##
2階は男子部屋で、俺は千田を含む7人と一緒の部屋だった。
消灯時間の1時間前に盛り上がりを見せていたのはUNOゲームだ。
負けた奴は、罰ゲームと千田が言い出した。
俺は見事に惨敗だった。
敗者は、1階の女子たちの様子を視察して帰ってくるというミッションを課せられた。
制限時間は10分だ。
やる気でねえ…
強引に部屋から出された俺は、後ろをチラチラと気にしながら薄暗い木の廊下を進む。
小さく開いた部屋のドアから千田たちが顔を覗かせて、にひひと意地悪な笑みを浮かべて手を振っている。
これ、先生に見つかったら即アウトじゃん。
まあ、一階にいる時に見つかった場合の口実は考えてはいるけど。
トイレ探してましたと、適当に言っておこうと思う。
次に振り向いた時にはもう、部屋のドアは閉められていた。
運が良いのかどうかはさておき、1階に到着した時点ではまだ先生や他の生徒には会っていなかった。
角を曲がったら厨房だと考えられる場所から、煌々とした明かりが漏れていて、洗い物をする音や板前や女帝の打ち合わせの声が響いていた。
夕食の湯豆腐の味を思い出して顔がにやけた。
廊下の壁の時計を見ると消灯まであと30分を切っていた。
そろそろ見回りの先生も現れそうだ。
視察は適当にして、さっさと部屋に戻るか。
そう思っていた時だった。
生ぬるい風が頬を掠り、どこから入り込んできたのかと見回していると、目線の少し先にあるガラス張りの扉が開けられていることに気が付いた。
中庭だ。
その斜め前には、どうやら一つ目の女子の部屋があるようで、中から、時折高い笑い声が聞こえてきていた。