とびっきり、片思い。
森川の大きな声が耳に届いた。
「それに、もうすでに一回会っちゃったじゃん!コンビニで」
コンビニというワードを聞いて、謎が解けたようにハッとして頭を上げた。
ひょっとしてアイドルのカナタだろうか...。
だからあの時、あんなに嬉しそうだったんだ。
脳裏に笑顔が蘇った。
衝撃で冷静さを失った脳内と、ドクドクと脈打つ鼓動の音がうるさい。
その隙間に入ってきたのは、時計が秒針を刻む音だった。
あと2分で制限時間の10分になるところだった。
俺は、後ろ髪を引かれる思いでその場を去った。
あの後、新垣はなんて言ったのだろうか。
結局、先生には遭遇せず無事に任務を終えて部屋に戻った。
「お前すげえな!どうだった?」
千田が身を乗り出して聞いてくる。
「いや、普通だったよ」
俺にとっては、鉛のようなものが胸の中に残る旅だったけど。
それを悟られたくない一心で平然を心がける。
「テレビ見て、きゃーきゃー騒いでる感じだったぜ。あと、」
そこまで言いかけて息を飲んだ。
「あと?」
目の前のルームメイトはみんな興味津々だ。
じっくりと吟味した言葉を紡ぐ。
「中庭があって、そこに誰かいたっぽい」
「誰だよ!?」と千田が聞く。
「わり、そこまでは見れなかった」
「そこ重要だろー!」
千田は布団に背中から倒れながら叫んだ。