とびっきり、片思い。
タイミングを計ったかのように部屋の戸が開き、そこに一斉に注目が集まる。
顔をのぞかせたのは、保護者から大きな瞳と微笑みがチャーミングと話題の男性、田中(たなか)先生だ。
「もうすぐ消灯時間だぞ〜」
「ういーすっ」
みんなして頭を下げた。
先生は、全体に目を向けてから一喝する。
「明日も早いんだから早く寝ろよ。またあとで来るからなあ」
そう言い残して、田中先生は去った。
とりあえず、電気を消してそれぞれの布団に潜り込んだが、誰も眠る気配はない。
暗い部屋の中でうつぶせのまま話す。
話題の中心になったのは、恋バナだった。
今、一番触れてほしくないものだ。
「悪い。俺、疲れたから今日はもう休むわ」
この気持ちを整理するには、少し時間が必要だ。
千田の「大丈夫かよー?」と気にしてくれる声に「うん」とだけ答え、頭から布団を思いっきりかぶって目を閉じた。