とびっきり、片思い。


急な大声に何事かというように、教室内にいる人たちの視線が私たちに集中したが、今は止められない。


百合子と喜びを分かち合い、手をとって二人でその場をくるくると回った。



「待ち構えていたこの日が来たんだね、未紗!」


「ついにだね」



広島にいた頃から、歌って踊っている彼の姿を実際に見たいと、ずっと夢見てたんだ。



「今朝のニュースで言ってたの。未紗は、もう登校してる時間だろうなーと思いながら見てて、早く伝えたかったの」


「そうだったんだね」


「うん。ツアーは秋頃からスタートするらしいよ」


「秋かぁ…」



今は7月半ばだから、まだ先だと思ったけど、意外にすぐかも!とも思った。



「近々案内が来ると思うから、また詳細が分かったら言うね!」



百合子がそう言った直後、タイミングよく予鈴のチャイムが鳴ったので、百合子は隣の自分のクラス(2組の教室)に戻って行った。



ライブに行けるかもしれないと思うだけで、嬉しさは膨らんだ。



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