とびっきり、片思い。

もどかしい





7月が終わりに差し掛かったある休日の午後、家の中で手鏡を前に笑顔の練習をしていたらため息が漏れた。


“人のために笑うのよ”と、演技レッスンの時に先生が言うんだ。



たとえ自分の調子が最悪であろうと、笑顔を届けることが仕事だって。



鏡の中の笑顔の自分が気持ち悪くて、パタンと蓋を閉じた。



そして、壁に貼っているカナタのポスターに視線を移した。


私は、画面越しにどれだけ彼の心からの笑顔を見たことがあるんだろうって、ふと思った。



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