とびっきり、片思い。
遠ざかっていく背中を見ていて、あのがたいの良さと程よい筋肉のつき方は、部活の野球だけで鍛えられたものではなく、長年の空手で出来上がったものなんだと思った。
「バイバイー」
ベンチからたくましい背中に向けて言ったら、中田はピタリと足を止めて振り向いた。
「ちゃんと受け取れよー。落としたら妖怪失格だからな!ふふっ」
「ええ!」
訳が分からないことを口にしながら、急に何かを投げてこようとしているから、焦って立ち上がって構えた。
ポトッと手の中に落ちたのはイチゴ味のキャンディーだ。
「ナイスキャッチ」
親指を立てたグットのサインと共に向けられた、くしゃっとした笑顔が夕日に照らされて眩しかった。
「ありがとう!」
「どういたまして。じゃあにー」
“じゃあね”ってことだろう。
中田はくるりと身体の向きを変えて、小走りで自転車に向かった。